現代において、「物質資産」は、きわめて曖昧で不安定なものになりつつあります。莫大な資産や会社財産を相続したり、築き上げたりしても、ハイパーインフレが生じたり、経営が時代についていけなくなったりすれば、何の価値もありません。堺屋太一氏やピーター―ドラッカー氏が書いているように、これからの世界は「知価社会」になり、「知的労働者」が成功する時代になります。現に、今をときめくIT長者たちは、大きな工場も多数の社員もいなかったのに、短期間で巨額の富を築いています。つまり、かつては、生産設備などのハード面で資産を持たなければ、巨万の富を築くことはできなかったのですが、幸いなことに現代は、「知識と知恵」があれば、わずかな物的資産から巨万の富を築ける「チャンスの時代」になったのです。もちろん、「巨万の富を築くこと」イコール「満足できる人生」だと言っているわけではありません。巨万の富を築くということは結果の1つの例であって、現代社会で「満足できる人生」を送るための最強かつ唯一の武器が「知識と知恵」だということです。
志望校合格や塾のクラス昇格では満足感を与えられないことは述べました。また賞品や賞金も解決策にはなりません。金品が目的では勉強自体に興味や関心がわきませんし、これらは使うことで快楽を得るものですから勉強がいっそう苦痛になります。さらに自分のための勉強で他人から金品を得ることには道義的な問題もあるでしょう。どちらにしても賞品や賞金は一時的な原動力にはなっても長続きしません。勉強自体に興味や関心がわき、金品に頼ることもなく、即効性があって効果が持続する方法、それは「ほめられること」「認められること」です。人間には原始的な承認欲求があり、ほめられれば無上の喜びを感じ、認められなければ挫折感、疎外感、敗北感を味わいます。
学生時代と違って、社会人になるとさまざまな問題に遭遇します。出題範囲がなく、傾向と対策が立てにくい問題に立ち向かっていかなければならないのです。得意だろうと苦手だろうとおかまいなしです。社会人の問題解決は、その点を前提として考えなければなりません。そこで、これからの時代に勝ち残る方法として、自分の取り柄を磨くことを勧めたいと思います。苦手分野を克服したいと願う気持ちはやまやまですが、苦手分野というのは、これまである程度の努力をしてきたのに、それでもできないところのはずです。これは本人の能力特性との相性が悪いことにほかなりません。つまり、やりつづけていてもできるようになる保証はないのです。それとくらべて自分が取り柄と思っているところは、能力特性との相性もよく、また努力がそう苦にならないはずです。その取り柄を武器にできれば、リストラ候補にあがることもなければ、転職もはるかに容易になるはずです。苦手を放置しておくことが心配かもしれませんが、得意なことがあれば、仕事上はそこに立候補することで、苦手な仕事がまわってくる確率も少なくなります。自己主張が必要とされているいまの時代には、こうしたやり方がより許されるものとなっているのです。